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鎌倉時代に製作された、青銅製の出羽三山月読双竜鏡です。
傷やヒビはなく、直径は186mm、重さは944g。
和鏡とは異なり、宋や高麗で流行していた竜鏡の図柄を取り入れ、山岳信仰と結びつけたものです。

見所は①中央部、②双竜、③外周部に大別されます。

①中央部は出羽三山から立ち昇る霊気が月と豊穣を導くことを表しており、これは羽黒山の主祭神である稲作の神・宇迦之御魂神(羽黒権現)と、月山神社の月読をイメージしたものです。
西の伊勢神宮、東の出羽三山と呼ばれ、太陽神が天照・伊勢神宮であれば、月の神は月読・出羽三山として古来より信仰されました。
出羽三山は元々草木も生えぬ火山であり、その後月を背に緑生い茂る豊かな土地と化したことから信仰されるようになり、海・風・月その全てが豊穣をもたらすとして今も多くの参拝者を集めています。
こちらの鏡も、山から立ち昇る霊気や周囲の風が月に昇華し、やがては稲に実りをもたらす存在として図柄が構成されています。

②双竜が彫り込まれていますが、これは日本や朝鮮の考えとは少し異なり、元々は蝦夷の蛇神でした。
①の由来から、季節が移り変わるごとに実りがあり、またその源泉であると考えられたため、生まれ変わりの象徴としても出羽三山は信じられていました。
ゆえに脱皮を繰り返す円環の象徴である蛇が関連づけられ、出羽三山神社として奈良時代に開かれた時にこれは竜であると信じられるようになりました。
月山に潜み、羽黒山の鏡池をねぐらとし、風を呼び、雷を起こし、雲を沸かせて雨の恵みをもたらす竜神として祀られています。
この鏡においても舞い上がる竜の周囲には風が吹き、波が荒れ、双竜が結びつくことで天地の循環を表現したものです。

③外周部には出羽三山の形をかたどったものと八卦の紋様(一つ一つことなります)が等間隔で8つずつ配置されています。
山岳信仰・修験道は密教と結びつき、日本由来の五行思想を取り入れていました。その魔除け、破邪の法として神聖な月と双竜を守るようにして配置されたものです。


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